第3回の幼心 「東京大学文学部の講演会」 で作家の思いにふれる
2013年11月29日(金)19時~20時30分
東京大学文学部・大学院人文社会系研究科
仏文研究室主催 ジャン=フィリップ・トゥーサン講演会「小説の真実」
時間とはズレるものです。
曖昧さのなかで、時間とたわむれる。
それが、小説の醍醐味です
ジャン=フィリップ・トゥーサン
フランスの小説家 ジャン=フィリップ・トゥーサンが来日。
『マリーについての本当の話』 野崎 歓訳・講談社にて発売された
本邦での新著を題材に、講演会が行われました。
~小説家ってどんな人?~ との単純な疑問を胸に
東京大学本郷キャンパス法文2号館2階2大教室へと
足を運んできました。
写真は、ちょうど講演当日がトゥーサン氏のお誕生日ということで
「ご祝儀を」と講演後に、新刊本を購入。記念にちょこんと並んで
直筆のサインをいただいたものです。
LA SALLE DE BAIN (邦題:『浴室』)を原書で読んでから
彼の“割り切った”描写と簡潔な表現に、目を覚まされ
いつかは、お話を聞いてみたいと。
そんな希望が、かなった日でもあります。
語り手、主人公、場所。そして、時間を
construire 建造していく
そう語るトゥーサン氏の話をフンフンと聴いていくなかで
いちばん印象的だったのが、冒頭のフレーズ。時間についてです。
時間とはズレるものです。
曖昧さのなかで、時間とたわむれる。
それが、小説の醍醐味です
トゥーサン氏は―
書き手が時間とたわむれるところへ
読み手を誘いこむ。曖昧さのなかでの両者の出逢いを
“小説の楽しみ”と言っているようでした。
「ようでした」とするのは、『小説の真実』と題されるも
話の核心は、上手にぼやかされていたように感じたからです。
哲学者は、むずかしい言葉で核心をつき
小説家は、簡素な言葉で核心をはぐらかす
いつも感じるそんな思いを再認しつつ
「ぼくの小説を、しっかりと読んでくださいね」という
彼の思いを、しっかりと受けとめてきた講演会でした。
小説家の思い―それは、ぼくの本を読んでくださいね
そこで第3回の幼心、「小説家ってどんな人?」との疑問には
「すべてを小説のなかで語る人」、という答えになりそうです。
テキスト:『マリーについての本当の話』 ジャン=フィリップ・トゥーサン著、野崎歓訳 講談社
◯第1回の幼心 「小説ってどこがおもしろいの?」 を身近な論理で考える
◯第2回の幼心 「上手な文章ってなに?」 を平明な心得から覗く
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