第1回の幼心 「小説ってどこがおもしろいの?」 を身近な論理で考える
テキスト: 『文学レッスン』 新潮文庫 丸谷才一 聞き手・湯川豊
- 丸谷さんが批評家として長篇小説を評価するとき、あるいはもっと具体的に文学賞などの選考をするときといってもいいかと思うのですが、その基準というものをおもちのような気がするんです
少しは、本でも読んだら? マンガ読んでるよ! マンガもいいけど…長い文章読んでみたら?
このような会話はもちろん家庭の日常で繰り広げられていることもありますが、大人が自問自答している“会話”であるかもしれません。
そこで第1回の幼心は、「小説ってどこがおもしろいの?」を身近な理論で考えます。テキストは、丸谷才一の『文学レッスン』です
「小説のおもしろさ」とは、魅力的な作中人物と出会うこと
丸谷才一氏は、『文学レッスン』で小説の選考基準をつぎのように話ています。
- 僕の体験を総合してみると、三つあるんです。①作中人物、②文章、③筋(ストーリー)の三つですね。この三つから考えていけば、いちおう何とか論じることにはなりそうだ。前の二つだけではだめだし、後の二つだけでもだめ、そんな気がしたんですよ。
小説のおもしろさとは-
【作中人物】
この人物は好きだ。魅力があると感じる人と出会う
【文章】
語り口が丁寧なのに、書かれている“世界”が混沌としている
【筋(ストーリー)】
その語り口が、千差万別。ゆえに、飽きさせない筋ができている
およそこの3つを味わうことで、小説から「おもしろさ」を引き出すことができる。と、丸谷才一氏は語っています。
小説の読み手としての「おもしろさ」とは、まずはじめに魅力的な【作中人物】と出会うこと。【文章】や【筋(ストーリー)】は、書き手として課題に近いかもしれません
小説にはふだん出会えない「おもしろい人」が出ているよ!
これが幼心からくる、「小説ってどこがおもしろいの?」の回答になりそうです
テキスト: 『文学レッスン』 新潮文庫 丸谷才一 聞き手・湯川豊
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